上級

【中上級】漫画で確認、似た意味の多い言葉

中上級ともなると、一つの言葉=一つの意味、という覚え方をするわけにもいかなくなります。今回はそんな似たような意味をたくさん持つ語彙に焦点をあてた活動を紹介します。

「自分たちで考える」ことが要求されるので、レベル調整に気をつけてぜひ実際してみてください。

【中上級】似た意味がたくさんある言葉

例えば、「軽い」と一口に言っても、「重さが軽いのか」「程度が軽いのか/ゆるいのか」というグループに分けることができます。

「軽い怪我」といえば「重度の低い、程度が軽い」となりますし、「マッサージで体が軽くなった」といえば、「重さが軽減した、軽くなった」という意味になります。

このような言葉は実は数多くあり、動詞や形容詞を含めた主なリストが『総まとめN2 語彙』の第7週1日目〜3日目にあります。

また、そんな「似た意味の言葉」に焦点を当てた漫画が『マンガで学ぶ日本語表現と日本文化-多辺田家が行く-』の7月-1 (p.60-65)に掲載されています。

今回はこれらの教材を使用して、自分たちで考える、話し合う、まとめるという活動を紹介します。

実施方法

漫画で導入

読む前の準備

T: みなさん、熱いと暑いの違いを知っていますか?(板書しながら)

S:知っています。暑いは、気温が高いです。

T:そうですね。熱いは?

S:飲み物が熱いです。

T:そうですね。じゃぁ、こんな文がありますよ。「昨日のサッカーは、本当にあつくなったなぁ!ドキドキしたよ!」これはどういう意味でしょうか。

S:天気がよかった?

T:でも、ドキドキ、とありますよ。

S:"excited"の意味ですか。

T:そうですね。興奮した、ヒートアップしたという意味で「あつい」を使うこともあります。

T:今日は、同じ言葉でも、似たような意味がたくさんある言葉について、勉強しましょう。

漫画を読む

マンガで学ぶ日本語表現と日本文化-多辺田家が行く-』の7月-1 (p.60-65)を各自やグループで読んでもらいます。

まずは、登場人物を簡単に紹介してから、読む活動に入るといいと思います。

授業時間や学習者のレベルによって、やり方を調整してみてください。時間が少ない場合は授業の前準備として宿題で読んできてもらったり、レベルが低い場合は単語と訳語のリストを渡しておくなどの工夫が必要となります。

読んだ後で、付属の問題を行う

T: 漫画ではたくさん「あつい」が使われていましたね。それぞれのコマの「あつい」は、どちらの意味ですか。分けてみましょう。(ここでカップルが仲がいい様子を表す「アツい」の文も足しておきます)

→確認問題①を実施→答え合わせ

T:では、今度はそれぞれの番号を意味ごとにグループに分けてみましょう。(必要であれば語彙確認)

→応用問題①のグループを使って、確認問題①の単語にふってある番号を、①~④のグループに分ける→答え合わせ

T: 「あつい」だけでも、4つのグループに分けることができるんですね。では、それ以外の言葉はどうでしょうか。みてみましょう。

例を一つ取り上げ、クラス全体で先ほどの活動に持っていく

似た意味がある言葉のリストを見る

総まとめN2 語彙』の第7週 1日目〜3日目にある言葉のリストを見て、まずは「こんなにたくさん似たような意味があるんだ!」と感じてもらいます。

大変だ〜と思うよりも、「一つの言葉を覚えればこんなに応用できるんだ!」と感じてくれたら嬉しいですね。

一つの言葉を取り上げ、先ほどの活動に持っていく

リストにある言葉を一つ選び、みんなでそこにあるフレーズで文を作っていきます。

例)取り上げた言葉「軽い」

  1. 軽い怪我(フレーズ)ー昨日、サッカーをしていて、軽い怪我をしてしまった。(文)
  2. 被害は軽かった-台風があったが、被害は軽かったので、よかった。
  3. 軽く運動する-最近毎日10分ぐらい、軽い運動をするようにしている
  4. 軽い罪-今回の事件は、軽い罪で終わるそうだが、それは納得いかない。
  5. 気持ちが軽くなった-大きい試験が終わって、気持ちが軽くなった
  6. 負担が軽くなった-子供が大学に入ってアルバイトを始めたので、親の負担が軽くなった。

文をグループ分けする

それぞれの文を見ながら、「軽い」には、どんなラベルをつけてグループ分けできるのかを考えてもらいます。

  • グループ①:重さが「軽い」
  • グループ②:大きさ/程度が「軽い」
  • グループ③:気持ちの「軽さ」
  • グループ④:簡単なという意味

そして、作った文がそれぞれどのグループに当てはまるのかをみんなで一緒に考えます。

全ての単語がきれいにグループ分けできない場合もありますし、1つだけ飛び出て違う意味を持つ言葉も出てくるので、「正誤」に拘らなくても大丈夫です。考える過程を意識してもらえればと思います。

今度は学生が自分たちで行う

クラス全体での確認作業が終わったら、今度はグループやペアで活動を行います。

  1. 総まとめN2 語彙』の第7週 1日目〜3日目にある言葉のリストから、1つの言葉を選んでもらいます。
  2. 各自でフレーズを見て、それぞれのフレーズで文を作成します。
  3. その文を見ながら、カテゴリー分け(グループの分類)を考えます。
  4. 作った文をグループに分類します。
  5. 一通り終わったら、他のグループ(違う単語を選んだグループ)と合流し、お互いに作った文やカテゴリー分けやその理由を説明します。

⑤の作業に移る前に一度時間を取って、教師が先ほどの「軽い」の例を用いて、説明の仕方をデモとして見せてあげるといいと思います。

  • 意味がわからない文はありますか?
  • どのグループ分けに、自信がありますか?理由は?
  • どのグループ分けに、迷っていますか?

など話し合う項目をリストしておくといいです。

活動のまとめ

他のグループから意見をもらったり、もう一度考え直したり、文の間違いを修正するなどして、最終的な文とそのカテゴリー分けをまとめて教師に提出してもらいます。この報告活動を通して活動のまとめとします。

レベルや時間に配慮を

中上級の活動は、学生のレベルや使える時間によって更に広げることもできますし、こちらから制限をしなければならないことも多いのではないかと感じます。

各自で文作成をするのに不安がある場合

各自で文を作ってもらう時、あまりにも正確性が低くなることが予想されるようであれば、教師の方であらかじめ文を用意しておき、学習者は「読んで理解する→グループに分ける」という活動に専念してもいいと思います。

クラスによっては、グループ分けの基準となるカテゴリーも、教師の方で用意しておいた方がいい場合もあるかもしれません。

ワークシートを使う

取り立ててワークシートを配布しませんでしたが、「読む→文を作る→グループに分けて考える→発表→推考→提出」という流れで書き込むワークシートがあってもいいと思います。

時間に余裕がある場合

各グループで考えたものを、他のグループと意見交換するだけではなく、最終的にクラスの前で発表してもらってもいいと思います。

また、お互いに自分たちがカテゴリー分けをした言葉のリストを見せ合い、今度は相手のグループのリストにある言葉を使って新しい文を作成してもらうのもいいと思います。

参考書籍

日本文化だけでなく、日本語表現も学べるので嬉しい。各漫画に問題(正誤判定や考える活動)が入っているのも便利です。