敬語の練習にリスニングのアクティビティを取り入れた教案とワークシートのサンプルを配布します。実際の日本語に触れることができる動画も紹介しています。
【敬語】図書館の場面で聴解練習
場面は「図書館でカードを作って本を借りる」というものですが、敬語が多く使われているので、ビジネス日本語の教材作成を考えている方の参考にもなるかもしれません。
今回は「聴解+敬語」ということで、動画を見てワークシートの穴埋めを行います。サンプルとしてダウンロードできる穴埋めワークシートもありますが、それを参考に他の場面を想定して教材を自作してみるのもいいと思います。
準備物
■ウェブサイト
教材を作るときに、文化庁のこちらのサイト「つながるひろがる」を使わせていただきました。
https://tsunagarujp.bunka.go.jp/level02/b08
場面別に動画が見られるだけでなく、各場面の字幕、スクリプト、場面別動画、語彙リストが用意されており、日本で生活するための日本語を身に着ける際にとても役立つサイトになっています。
また、ウェブサイトで簡単にアクセスができるので、オンライン授業での聴解レッスンでも使いやすいと思います。
場面はいくつかありますが、今回は「レベル2」の「図書館に行ってみよう」を使用します。
■ワークシート
上記のウェブサイトの音源を使用して、サンプルワークシートを作ってみました。
実施方法
今回の目標
- 「図書館員の丁寧な話し方を聞いて、指示を理解することができる」
- 「指示を聞いて(仰いで)図書カード申込書に記入することができる」
- 動機付け
- 資料を使って語彙を確認
- 動画を見る
- 問題の答え合わせ
- スクリプトを見ながら穴埋め
- ロールプレイ
①動機付け
T: みなさんは日本の店員さんや市役所の人と話したことがありますか。
S:はい、あります。
T:どんな人と話しましたか。
S: デパートの人とか、レストランの人とか。
S:私は病院の受付の人と話しました。でも、難しかったです。
T:何が難しかったですか?
S:みんなとても速く話しますから、よくわかりませんでした。
T: 速かったんですね。あと、言葉も少し難しかったかもしれませんね。
S:はい、わからない言葉がたくさんありました。
T: そうですか。お店の人は丁寧な言葉を使うので、それが難しかったかもしれません。では、今日の授業でも、丁寧な話し方を聞いてみましょう。
T: これは、どこだと思いますか。
S:本がたくさんありますから、本屋ですか。
T:でも、「貸」の漢字がありますよ...?
S:図書館ですね。
T:はい、図書館のスタッフのことを「図書館員」と言います。図書館で本を借りたことがありますか。
S:学生の時、大学の図書館によくいきました。
T:いいですね。今日は図書館員さんの会話を聞いてみましょう。
②資料を使って語彙を確認
T:初めて図書館を使う時、このようなカードを書かなければいけません。ちょっとみてみましょう。
T:これはなんですか?
S:カード....書?
T:申込書、と読みます。本を借りるカードの申し込みをします。
T: そのほかにも、たくさん難しそうな言葉がありますね。近くの人と、どこに何を書けばいいのか、話し合ってみましょう。(机間巡視しながら難しそうな言葉をチェック)
- 「フリガナ」「生年月日」など資料に出てくる言葉
- 「市内」「西暦」「在留カード」「返却」など動画に出てくる難しそうな言葉
をここで事前に導入し、全員で読み上げて音で確認しておきます。
「令和」を知っていても、Tは大正、Sは昭和、と知らない学生も多いかもしれません。
T: では、動画を見て次の質問に答えてもらいます。まず問題を読んでおきましょう。
アンジェラさんについて、○か✖️を書きましょう。
- 市の中に住んでいます。( )
- 住所を確認するためにパスポートを出しました。( )
- 本を3冊借りることができました。( )
- 本を9月21日に返してもいいです。( )
- 本を9:00pmに返してもいいです。( )
③動画を見る
シーン1とシーン3の動画を2つ合わせてみます。聞き取れなかった言葉などはメモをしておいてもらいます。
④問題の答え合わせ
まず周囲のクラスメートと話し、学生たちで問題の答えを話し合います。それから、教師主導でクラス全体で答え合わせをします。
多くの人が間違えた問題があったら、そこの部分だけをもう一度再生して確認することも必要となるでしょう。
⑤スクリプトを見ながら穴埋め
T:では、今度はもう一度スクリプトを見ながら聞きましょう。図書館員さんはたくさん丁寧な言葉を使います。どんな言葉を使ったか、書いていってください。
- スクリプトが書いたプリントを配布
- もう一度動画を流す
- 穴埋めをさせる
- その後、確認
確認するときは、一つ一つ読み進めながら確認していく。
進め方例)
S:「きにゅ」と聞こえました。どういう意味ですか。
T:ご記入ください、と言いましたね。「このような用紙やフォームに、書く」という意味です。
S:それから、もち?おもちですか?
T: 「お持ちですか」と言いました。漢字で書きます。「持っていますか」という意味です。後の方にもありましたね。
学生から引き出しながら、板書しながら答えを提示していくといいと思います。
⑥ロールプレイ
確認が終わったら、クラスメイトとペアになってスクリプトを読み上げる練習をし、最後にロールプレイをしてもらいます。実際に印刷した図書カード申込書に書きながら実施すると、現実味を帯びていいかもしれません。
ここまで実施することができれば、「聴解」という活動を「会話」という他技能までつなげることが可能になります。
シーン1とシーン3の両方の動画のスクリプトを使うのは大変だと思うので、シーン1の方だけ行ってもらうなど制限をするといいと思います。
スクリプトも全く同じように覚える必要はありませんが、できれば今回新しく学んだ語彙や表現を使い、「指示を聞いて図書カード申込書に記入する」というタスクを実施できるのが望ましいです。
レベル別ポイント
初級後半から取り入れられる活動ですが、場合によっては難しすぎたり簡単すぎたりすることもあるかもしれません。
ワークシートの穴埋めの箇所を変えたり、紹介する語彙の数を調整するなどしてレベルの調節ができると思います。
与えられた授業時間によってもできる活動に限りが出るので、授業時間に応じて計画を立ててみてください。
参考情報
本の紹介
今回の聴解活動は、こちらの書籍を参考にさせていただきました。聴解授業の教え方・作り方に始まり、授業タイプに応じたカリキュラムの見本・授業で使える聴解活動などが掲載されており、聴解授業のコツが掴めます。
聴解授業の指導法がわからない!という方はぜひ。
その他の敬語の活動アイデア
今回は聴解練習の教材と使い方を紹介しますが、敬語の会話練習に焦点を当てた記事などもありますので、こちらもどうぞ。