他の国の言語と比べ、日本語に特に多く使われているというオノマトペ。日本語教育ではだいたい中級以降から紹介され始める印象ですが、実は会話の内容を理解するのにも、必須な事柄で、もっと積極的に早い段階で導入してもいいのでは?と思う項目の1つです。
ということで、今回はオノマトペを日本語授業に取り入れる際に使える教材や、その使い方を紹介します!
日本語授業に使えるオノマトペ教材と活動
日常にたくさんあふれているオノマトペ 。微妙なニュアンスの差異を理解するのにとても重要な役割を果たすことも多く、効果音、漫画、アニメ、商品名やパッケージなど擬音語・擬態語が使われている素材はたくさんあります。
今回はそんな擬音語・擬態語を日本語教育の授業に取り入れる際に使える教材と、クラス活動のアイデアを紹介します。
効果音の音源素材
実際の効果音を聞かせてオノマトペを紹介・確認するなどの活動に使えます。(フリーの無料素材を紹介していますが、利用規約はもう一度ご自身でご確認ください。)
アクティビティ:効果音を聞いて推測
こちらは擬音語のみの活動になってしまいますが、ドアの「ギギギー」という効果音を流して、どんな表記をすればいいのか、3択問題で推測をしてもらいます。
①音源を流す
音源はこちらのサイトなどからダウンロードしておきます。
②3択問題を表示
さぁ、今聞いた音はどんなオノマトペを使うと思いますか?
そんな問いかけをしながら、一番近いであろうと思う擬音語の表記を選んでもらいます。
- トントン
- ぷるぷる
- ギギー
問題の提示方法はスライドにしてもいいですし、プリント配布にしても。
③最後に答え合わせ
答え合わせをします。そこから、それぞれのひらがな・カタカナがどんな印象を持っているのかということが説明できます。また、正しい答え以外にも「じゃぁ他の選択肢はどんなものに使うと思う?」と考えてもらうこともできます。
オノマトペのフォント素材
よく漫画で使われる効果文字がACイラストにあります。白黒もありますが、以下のようにカラーのものも結構揃っていますよ。
ACイラストには、たくさんオノマトペのイラストがあるので、助かります。「オノマトペ」や「擬音語」「擬態語」で検索するとたくさん出てきます。
月1,000円程度で商用利用可能なイラストが好きなだけダウンロード可能。検索もしやすいので、登録しておくと楽です。
アクティビティ:フォントとイラストをつなぐ
上記で紹介したようなフォント画像と、それに合うイラストを用意しておき、マッチングする活動です。
この活動はオンライン授業でも実施できる点がメリットですね。Zoomであればアノテーションツールを使って、学生に画面に書き込みをしてもらうことができます。口頭で答えるだけではなく、数字とアルファベットを線でつないでもらったりしても、楽しいでしょう。
また、同様の活動を「食感のオノマトペ」に使うのも、楽しいと思います。
こちらの活動は、Jamboardを使って該当するイラストを、オノマトペのフォントに動かす活動です。
オンライン授業で使える他の活動案をまとめた記事もこちらから読めますので、ぜひ。オンライン授業で使える活動集リスト【文型別】
プリント教材
少し子供向けになりますが、動物の鳴き声に触れながらカタカナが練習できる教材プリントもあります。
プリントは7種類セットになっていて、習ったカタカナから少しずつ練習ができるよう、「ア〜サ行まで」「タ〜ハ行まで」と段階に分けてプリントを準備しました。
カタカナ練習にオノマトペを使いたいと考えている方は、お役立てください。
漫画素材
漫画には非常に多くの擬音語・擬態語が使われています。それらが出てくるコマを見せて、導入での使用やグループ活動での応用ができます。
ブラックジャックによろしく
まず二次使用フリーの漫画作品としてよく知られているのが、『ブラックジャックによろしく』です。
商用利用も可能ということで、本当にありがたいです。
以下のような漫画のコマをいくつか切り取って、絵を見せながら最初の導入で使用することもできます。
マンガルー
漫画のコマを好きなように切り取って、ブログなどに埋め込むことができるツールです。
漫画のコマをいろいろと見てみると、たくさん擬音語・擬態語が入っていますので、それらを使うこともできます。
アクティビティ:漫画を切り取り、発表
各グループにオノマトペがたくさん入った漫画の1シーン(1ページずつ)の素材を配っておき、各自で以下のようなトピックを元に調べ学習をしてもらうことができます。
- どんなオノマトペが使われているか
- そのオノマトペを使う定義
- その他にそのオノマトペが使われている例をインターネットで探す
時間に余裕があれば、他のグループと意見交換をしたり、前に出てきて調べた成果を発表するなどの活動ができます。
オノマトペを元に、自分たちで「こんな時に使うと思う」というのを説明しなければならないので、意外と様々な語彙を使用する練習にもなります。
漫画を取り入れた授業活動にもご興味のある方は、こちらの記事もぜひ。【マンガ教材】日本語教育の授業に漫画を取り入れるアイデア
動画を使う
CMやYoutube動画で時々みかけるオノマトペの動画を使用するのもいいと思います。
アニメを使う
アニメを教材として導入するのも、学習者の興味を惹きつけることができると思います。
トムとジェリー
トムとジェリーは著作権が切れている話が多いので(古いもの)、それを使用することもできます。
とりたててオノマトペ が表示されるというシーンはないのですが、「この場面だったら、どんなオノマトペ がふさわしいか?」「アフレコしてみよう!」なんていう活動も楽しそうです。
三月のライオン
心に闇を抱えたまま生きている中学生プロ棋士の桐谷零(きりたにれい)が、様々な葛藤をしながらも明るい三姉妹との出会いや、周囲のプロ棋士との関わりを通して少しずつ変わっていく姿が描かれたアニメです。
このアニメなんですが、擬音語擬態語が非常にたくさん使われていて、日本語学習者が楽しくオノマトペを学ぶのにもってこいの作品だと思います。
このアニメを使って出てきたオノマトペを書き出してもらうなどの活動ができます。
更に、和菓子屋さん、お盆の習慣、学校文化、お正月のおせち料理など日本文化もぎっしりつまっているので、ぜひ一度見ておくといいかもしれません。
ラインスタンプを作る
ラインスタンプにも、オノマトペがよく使われていますので、それを活用してみました。ちょうど使えるラインスタンプがなければ、作ってしまうのも手だと思います。
以下の動画では、イラストをACイラストからダウンロードし、そこにiPadのアプリを使って手書きで文字入れする方法を紹介しています。
せっかくなので、ラインのトーク画像の再現も作成して、そこにオノマトペが入ったラインスタンプもつけて、テキストメッセージを読む練習をしてみるのはどうでしょうか。
ライントーク画の作り方は、こちらの動画で見ることができます。
創作オノマトペ
アクティビティ:アニメで創作オノマトペ
そしてオノマトペの面白いところは、誰もが理解できる語彙としてのオノマトペもあれば、語感さえきっちり押さえていればある程度の融通がきくオノマトペもあるという点です。
先ほど紹介した3月のライオンというアニメでは、いろいろな「創作オノマトペ」が出てきます。
これを応用して、学習者にも各自「創作オノマトペ」を作ってもらうというプロジェクトを課すというアイデアもあります。
最後には作ったオノマトペを順番に発表してもらったり、オノマトペだけを見せてどんな場面を想定して作ったのかを3択で選んでもらう問題を作ったりなど、応用できます。
アクティビティ:商品名をデザインしよう
上記のように場面を限定せずに新しいオノマトペを作ってもらってもいいですが、「もう少しトピックが限定されていた方がいい」という学習者もいるかもしれません。
そんな時は、パッケージなどに使われているオノマトペを紹介した後、商品名を自分でデザインしてもらうような活動もおすすめです。
導入方法
創作オノマトペの活動を行う場合は、いきなり「新しいもの、何でもいいので作ってください!」と言われても困ってしまうことがあります。そんな時に参考になる導入方法を少し紹介します。
いくつか商品名のパッケージを見せて使われ方を理解してもらう。
オノマトペが使われている商品名のパッケージの写真や実物を用意しておき、各自で読んでもらって導入します。
創作オノマトペのお菓子サイトを見せる
「オノマトペ のお菓子」のウェブサイトがあります。このように日常で楽しく自由に擬音語・擬態語が使われている例を見せてから、「お菓子をデザインしてみよう」という活動に持って行くと想像がしやすくなります。
オノマトペのアプリ
アニマトぺ
または、「アニマトぺ」というかわいくておもしろいアプリもありますので、それを紹介してもいいでしょう。子供の日本語教育にも使えそうです。
上記のように、たくさんのアイコンがあって、それをクリックすると文字が出てきます。
ここで自分の声を録音します。
画面をタップすると、アニメーションが出てきます。それと同時に先ほど自分が録音した声を聞くことができます。
animatope(アニマトペ)
unouplus inc.無料posted withアプリーチ
無料ですが、有料版にアップグレードするとアイコンの種類が増えますよ。
授業中の使用だと各自にアプリをダウンロードしてもらうのが手間なので、オノマトペの授業をする前に「ちょっと家で遊んでみて」と提案してみてもいいかもしれません。(iPhoneのみですが)
Koekata
コエカタというAR(拡張現実)のApple Storeのアプリがあります。これは特にオノマトペに特化しているというわけではありませんが、印象に残る教材が作りたいと考えた時に使用しました。
スマホのカメラで動画を撮りながら声を録音すると、その内容が文字化されて3Dになり、画面上に勢いよく現れます。
Koekata
Astaster Inc.無料posted withアプリーチ
動画としても写真としても保存ができ、文字の色やサイズを変えたり、文字を移動させたりすることができます。
アクティビティ:身の周りにあるオノマトペを探そう
学生に一人一台タブレットがあるとやりやすいのですが、(または少し手間がかかりますが学生にアプリをダウンロードしておいてもらう)周囲にある物の動画を撮影し、そこにオノマトペの3D文字を挿入します。
撮ったものを写真や動画にしてクラスメイトとシェアをすると、記憶に残るオノマトペの活動となりそうです。iPhoneやiPadでしか使えないのであまり実用的ではありませんが、教師がiPhoneを持っていれば、それで撮ったものを学生にシェアするという形でもいいでしょう。
ゲームでチェック
オノマトペを題材にしたオンラインゲームを自作して、それに答えてもらうというアイディアもあります。
こちらはWordwallで作ったゲームの一部です。「笑う」「なく」に合う適切なオノマトペのカードを動かして入れてみてください。
参考資料
以上、オノマトペを日本語教育の授業に導入する際に使える教材を紹介しました。少しでも「オノマトペの教え方がわからない」という先生方の、ヒントになれば幸いです。
以下の書籍ではたくさんのオノマトペ が紹介されているので、オノマトペを一覧でみたい!という方はこちらもぜひご参照ください。
【書籍紹介】オノマトペラペラ マンガで日本語の擬音語・擬態語の中身を詳しく知りたい方はこちら