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【シチュエーションから引き出す】敬語の練習に現実味を持たせよう

敬語の練習に現実味を持たせよう

敬語の課はどうしても形の変換練習ばかりに注意がいってしまうことが多々あります。学習者も基本をマスターし、会話練習の中では上下関係を意識して練習できるけれども、実際の生活場面になると誤用が目立つことも。

今回は、少しでもそんな状況を打破できるような会話練習を元にしたアクティビティの実施方法を紹介します。

全体の流れ

敬語の形だけの練習から脱却するために、実生活で敬語が使われている場面をクラスで考え出してもらいます

それらの場面を細かく見ていき、実際にどんな敬語が使われているのかをグループでリストします。

グループ内でリストをしたら、実際にロールプレイをしながら会話練習をし、時間があれば発表などの形で他のクラスメイトと共有をします。

準備物

白紙をグループの分だけ

場面設定のイラストをいくつか

実施方法

①クラス全体で例を見せて実施

先生

敬語は上司や部下で使ったり、店員さんやお客さんで使ったりしますね。今日は、敬語をみなさんの生活の中で使う場面について考えてみましょう。

そう言って、デパートの店員さんとお客さんのイラストを見せます。

そして、考えられ得るお客さんと店員さんの会話をできるだけたくさん書き出します。

T: 「ここはデパートのインフォメーションセンターです。みなさんは、質問があります。デパートのカウンターで、どんな質問ができますか。」

S1:「スーツうりばは、何階ですか。」

S2:「トイレはどこにありますか。」

S3:「ポイントカードに申し込みたい。」

S4:「買ったものをやっぱり返したい。」

学習者から上がったセリフを書き出します。4つぐらい出そろったと感じたら、次のステップへ移ります。

T:「じゃぁ、お客さんの質問に答えてみましょう。お店の人はなんと答えるでしょうか。」

そう言いながら、店員さんが言うであろうセリフも引き出しつつ書いていきます。

次に、店員さんのセリフをみんなで一緒に敬語に変えていきます

T:「じゃぁ、お店の人の言葉を、丁寧な言い方に変えていきましょう。3階です、は?」

S:「3階でございます」

色を変えて変更した部分を書いていくといいでしょう。

板書の書き方も工夫するわかりやすいと思います。(例の画像は少しごちゃっとしていますが、行間の余白を多めに取った方がいいです)

ここまでできたら、もう一踏ん張り。あとは実際に会話をする形で練習します。

<T-Sで見本>

T:「これで、お店の人の話し方はわかりますね。じゃぁ、1の場面をやってみましょう。S1さんはお店の人です。」

S:「はい。いらっしゃいませ。」

T:「あのう、スーツうりばはどこですか。」

S:「スーツうりばは、3階でございます。」

T:「そうですか。ありがとうございます。」

S:「(例をする)」

文2の例は学生1と学生2でデモを見せてもらい、文3と4はペアで各自ロールプレイをしてもらいます。ペアで自由に会話を膨らませることがあってもいいと思います。

その後、いくつかペアを選んで、クラスで発表してもらいます。

ここまででこの活動を終わらせる短い版の実施もできます。その場合はデパートではなくアルバイト先などセリフの出やすい設定にして、セリフも4つ以上書き出し、練習場面を多くします。

こうすることで、十分「実際の場面で使える!」ということを意識した活動ができると思います。

②グループ活動に移る

クラスの時間に余裕がある場合は、ぜひ今度は各グループでその他の場面を出して、セリフを考えてもらうといいでしょう。

まず、場面設定はクラス全員で一緒に行います。

T:「では他に、デパートじゃないところでは、どんなところで敬語が使われていますか。」

S:「レストラン、美容院、駅、病院、図書館」

T:「じゃぁ、グループに別れて、考えてみましょう。レストランの設定は、どのグループが考えますか?」

このような形で、1つのグループに1つずつ場面を振り分けます。

あとはクラス全体の例と同じように、店員さんや駅員さんのセリフを考え、敬語にしてみます。机間巡視しながら、変換したものが正しいか確認し適宜訂正することも忘れずに。

③ロールプレイの実施

一通りでき上がった様子がみられたら、会話練習に移り、各グループでロールプレイの練習をしてもらいます。

全てのグループが練習を終えたようであれば、またクラス全体に発表という形で練習したロールプレイを披露してもらいます。

練習した全ての場面を見せる必要はありません。各場面で1つのセリフをピックアップし、そのロールプレイをするくらいでいいと思います。

ポイント

こういったクラスから引き出すタイプの活動は、実は教師のファシリテイトの能力が重要になってきます。

最初はうまくいかなくても、徐々にどんな風に引き出していけばよいのかが掴めてくると思いますので、ぜひ諦めないで取り組んでみてください。

敬語の授業は難しい!と思われがちかもしれませんが、日本社会では敬語は必須だと言えますし、おもしろい授業を展開したいですね。

また、この活動は学習者から場面を引き出すために語彙が多岐に渡ることも。もし語彙を制限したい場合は、ある程度教師側からシチュエーションを設定してしまうのも手だと思います。

おすすめ書籍

今回のアクティビティは、こちらの書籍からヒントをいただき作成しました。会話の練習方法で困っている先生におすすめ。

【書籍紹介】『会話授業の作り方』

もし学習者のレベルから考えて、引き出すのが難しそうであれば教師側からモデル会話の音声を聴かせたりスクリプトを見せたりして、導入することもできます。

上記は音読の教材ですが、

  • 携帯電話の申し込み
  • ホテルの利用案内
  • 旅行会社からの留守番電話

など敬語が使われている場面の音声とスクリプトが収録されているので、この教材を使用してみるのもいいと思います。

その他の敬語の練習で使えるアクティビティはこちらから。

http://edujapa.com/mikke/grammarbetsu/sonkeigogrammar/