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【昔話の聴解教材】会話・読解につなげるリスニング活動

聴解練習の一つとして、昔話を使用したアクティビティを紹介します。リスニングの練習を主とした活動ですが、それだけにとどまらず内容たっぷりの聴解活動です。

【昔話の聴解教材】リスニングでイラスト並べ替え

昔話はよく日本語教育の教材に使われますが、今回はそれを聴解練習で使うアイディアを紹介します。どんなイラストを使ったらいいのか、その教材はどこから入手できるのかなども記載しています。

例として使用する物語

今回は「笠地蔵」を例としてあげてみます。笠地蔵のとてもいい教材が、『初級日本語げんき1』の第10課に掲載されています。読物とイラスト、練習問題が載っているので、今回のようなリスニング教材を作るのにぴったりです。

実施方法

昔話を用いたリスニング活動ですが、ただ聞くという活動に止まらず、他の技能へと繋げることが可能です。

全体の流れ
  1. イラストで導入をする
  2. 音源を聞きながら、イラスト並び替え
  3. スクリプトを配布し、読んでもらう
  4. 答えあわせ、語彙確認
  5. 個人またはグループで、物語の概要を説明する
  6. 物語に関するクイズを作り、クラスメイトが答える

① イラストで導入する

上記のような、その物語の導入となるようなイラストを1枚用意します。

T:「今日は、日本の古い話を聞いたり読んだりします。タイトルは「笠地蔵」です。笠地蔵を知っていますか?」

S:「知りません。でも、傘はわかります。」

T:「そうですね。今の傘と少し違いますが、このような傘を昔の人はよくつけていました。地蔵はわかりますか?」

S:「よくわかりません。でも、似ているものを道で見たことがあります。」

T:「そうですか。(他にも地蔵の写真を見せながら)お地蔵様は昔からあるもので、みんなを守ってくれるものだと思われています。今日は笠地蔵の昔話を聞きます。他にも、こんなシーンがありますよ。」

そして、イラスト並び替えに使用する絵のカードを一つ一つ黒板にランダムに貼りながら「これは誰ですか?」「何をしていると思いますか?」と学生から引き出しながら、必要な語彙を書き留めておきます。

② 音源を聞きながら、イラスト並び替え

導入をしたら、笠地蔵の音源を聞いてもらいます。『げんき1』に付属のCDで音源を聞かせることができますし、教師が自分で物語を読み上げ、音源を録音してもいいと思います。

教材情報

少しレベルが上がりますが、このサイトでも昔話の音源をダウンロードすることができます。(英・中・台湾語翻訳あり)http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/12/31.htm

そして音源を聞きながら、笠地蔵の場面別になっているイラストを並び替えてもらいます。このイラストも、『げんき1』に掲載されていますので、印刷して小さいカードにしておくと、並び替えがしやすいと思います

③ スクリプトを配布し、読んでもらう

音源を聞きながら絵をストーリー順に並べたら、今度はスクリプトを配布して読んでもらいます。『げんき1』で出てくる笠地蔵の物語は、こちらでも読むことができます。


教材情報

フリーで読めるウェブサイトなので、ワークシートで配布しなくてもリンクをシェアすることで読んでもらえます。

https://sethclydesdale.github.io/genki-study-resources/lessons/lesson-10/literacy-8/

読みながら、

  • わからない言葉をチェックすること、
  • もう一度イラストの並べ方が合っているかどうか確認すること

を伝えておくといいと思います。

④ 答えあわせ、語彙確認

そして、一度教師を中心に、並び替えたイラストの順番を確認します。教師用に拡大した並び替え用のイラストを事前に準備しておき、学生から引き出しつつ正しい順番にイラストを並べて黒板に貼っていきます。

この時にそれぞれの場面別イラストの下に、学生からわからなかった語彙を聞き出して書いておくと、後で役に立ちます。

⑤ 個人またはグループで、物語の概要を説明する

そしてアウトプットの活動として、今度は個人またはグループ(ペア)で物語の概要を最初から最後まで説明してもらう練習をします。

もちろん先ほど並べ替えたイラストを見ながらでいいですし、確認の時に教師が板書した単語を見ながらでも構いません。

ある程度練習ができたようなら、上手にできた人(グループ)に前に出てきてもらい、実際に発表してもらうと良い刺激になると思います。

⑥ 物語に関するクイズを作り、クラスメイトが答える

最後のまとめとして、各自『笠地蔵』の聴解(読物)から答えがわかるような3〜5問のクイズを作ります。作ったら、グループで質問を出し合ってお互いに答え、まとめの作業とします。(下記参照)

  1. お地蔵さんは、いつおじいさんの家にきましたか。
  2. お地蔵さんは、いくつありましたか。
  3. お地蔵さんは、おじいさんにお金をあげましたか。

応用活動

さらにこの活動を発展させたい場合は、以下のような練習ができると思います。

  • 今回自分が新しく学んだ語彙で各自会話・文作成をしてもらう
  • 自分の国の昔話を1つ選んで、説明してもらう
  • 昔話をパロディにして、スキットを自分たちで考え最終プロジェクトにする など

いろいろな物語を使ってみる

今回は笠地蔵の物語を例に紹介しましたが、その他の物語でもいろいろなところに教材があります。1時間目に1つの物語をクラス全体で行い、そのあと同様に今度はグループごとに別の物語を選んでもらい各自で同様の活動を行うとしてもいいでしょう。

浦島太郎

少し長めなので中級前半ぐらいにおすすめです。音声とスクリプトがついています。

http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/07/01.htm

並び替えに使えるイラストは、『会話授業の作り方』にあります。

【書籍紹介】会話授業の作り方

かちかち山

スクリプト(読み物)は、『できる日本語準拠 たのしい読みもの55 初級&初中級』から、並び替え用のイラストは『聴解授業の作り方』から入手できます。

2013/3/21
できる日本語教材開発プロジェクト
2013年12月 アルク
大森雅美
¥2,200(価格) B5版 128p

花咲爺さん

日本語多読ブックスに、花咲爺さんの話が載っています。朗読音声も付いています。

にほんごたどく

こちらは並び替えに使えるイラストを掲載している書籍がないのですが、もしご存知の方がいらっしゃったら、ぜひご一報ください。

まとめ

ストーリーが長くなる場合は、一度に聞いたり読んだりすると疲れてしまう場合があります。場面ごとに区切りながら進める方法が、『日本語教師のためのアクティブ・ラーニング』のp.167に掲載されており、こちらも参考になります。

凡人社, 横溝 紳一郎 (著), 山田 智久 (著)

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その他、聴解教材のワークシートの作り方やサンプルを見てみたい、という方はこんな記事もあります。ぜひご覧ください。